前回のマイカルの続きです。今回はマイカル再生についてです。
解放軍イオン
イオンのバックアップによる再生が決定したわけですが、彼らは元々ライバルだった故にアンチイオン派も多くいました。そのためにイオンが意識したのは「進駐軍ではなく解放軍になれ」でした。あくまでもマイカルを助けに来たというわけではなく、マイカルのあなたたちが再建するのですという姿勢を貫きました。
実際の再建は困難を極めました。さしあたってはなによりキャッシュが枯渇していたことがなによりも課題でした。そりゃ倒産したのだから当たり前ですが・・・。そこでマイカルの管財人のである岡田氏は再生したヤオハンでも有効だった、回転差資金を生み出すことに注力しました。
キャッシュフローの改善
回転差資金とは売掛金から買掛金を差し引いた金額。つまり商品仕入れ日と支払日のタイムラグから生まれたキャッシュフローです。キャッシュ・コンバージョン・サイクルという言葉が近いと思います。
具体的に何をやったかと言いますと仕入先に支払サイトを伸ばす交渉を行いました。例えばアパレルなんかは60日サイトを115日にするなどの交渉です。当時のマイカルの在庫は800億円程あったので、在庫回転日数を30日としてサイトを50日伸ばせば200億円のキャッシュが生まれます。
普通であればこんな交渉は決裂しますが、そこはイオンの暖簾が活きてきます。日本屈指の小売企業であるイオンの岡田社長が頭を下げれば断るのは困難です。そしてこれらは目論見通り成功したようです。
現金の有効活用
この回転差資金で生まれた資金の使いみちが重要になってきます。マイカルが行ったのは工事です。工事と言っても新規工事ではなく、破綻前に手をつけていた工事です。破綻後工事が止まっておりずっと放置したままでした。それを実施しました。その後は多くの店舗が老朽化しており、これらを改修、さらに活性化させるための工事を実施しました。2002~2004年にかけて行ったこれらの工事費用総額は292億円です。この工事によりマイカル全体がプラスに上向き始めたのは言うまでもありません。
100億円の出血(膿)大サービス
動画にはしませんでしたが、マイカルの問題としてデッドストック(不良在庫)の問題がありました。民事再生を申請して以降マイカルの小売としての力は弱まり、仕入先から来る商品は売れ筋が少なかったのです。その為、在庫を多く抱えているという問題があいました。その金額は1店舗あたり7000万~8000万円あり、運営した店舗が140店舗だったので100億円あると担当者はにらみました。デッドストックは新しい商品を入れにくくする要素もあるため、これを一気に解消しようと目論見、一掃セールを計画。
出血サービスと言いますが、実際は膿を出すサービスなんですよね・・・。
各店舗に商品のリストアップを指示しましたが、実際にやってみると、40億円にも満たなかったのです。詳細を確認すると商品部が自分の失敗を曝け出したくないがために半分以下を勝手に却下していたようです。これに担当者は激怒してもう一度やらせた結果110億円出てきました。
その後集まった商品を衣料品、日用雑貨品を8割引、家電を5割引という狂気の沙汰のようなセールを敢行。結果2日で115億円完売するという盛況ぶり。あまりに盛況で駐車場に入り切らず、道路は渋滞をうみ、警察はブチギレ。防災担当者は謝罪の為に各警察署、県警等に1ヶ月ほど行脚して謝りに行ったようです。
その他には大胆な人事を敢行して、組織活性化を図ったり、一店舗あたりの損益が正確に出せるようにしました。当たり前のことなんですがね・・・。さらにこの損益把握をしたことにより不採算店舗を見つけ、閉鎖してマイカルのスリム化を実施して、収益力を高めました。
不良在庫が100億円ってどんだけ貯めてんだよ
不良在庫で売場を取られるから
早めの処分が必要だったから処分セールしたんだな
お前自身も早く処分セールしちゃえよ
生きたデッドストックさん
さすがにもうちょっとだけ待ってくんない?