どうも係長です。しくじり企業Lに注力したので、安宅産業の補完ブログが遅れてしまいました。
【ゆっくり解説】しくじり企業L 07話 ~トイザらス(Toys "R" Us)~
今回は安宅産業のサイコパス取引の実例を書きます。安宅産業は総合商社最下位という汚名を返上するために、積極的(?)に売上を伸ばそうと様々な取引をしました。その一つが前回お伝えした海外のビッグプロジェクトとして石油取引です。今回はその他の取引事例を書きます。
日本衣料の取引
安宅産業は縫製を営んでいた日本衣料と1974年から取引を行いました。当時の繊維業界は日米繊維協定に基づき、米国は輸入制限をかけていた為、繊維業界全体が不況にあえいでいました。そんな真冬の状態で突入したのが安宅産業です。安宅産業は資金繰りに苦渋していた日本衣料に対して、輸出が主だった縫製工場を国内向け生産に転換させて、安宅産業は原料の納入や製品販売に伴う金融を引き受けました。
結果は多くの人が予想できるように、商品は売れず工場は在庫の山となります。日本衣料は業績悪化が加速、1975年には資本金の約10倍の40億円の累積赤字となりました。安宅産業が取引を停止すればこれらの赤字が顕在化することは目に見えていました。
安宅産業はこの赤字を顕在化させない為に、他社が取引を停止する中、さらに日本衣料にのめり込んでいきます。金融機関の代わりに借入金を実質的に肩代わりをしたり、在庫を処理する為(名目的には川下作戦を一層強化)に新たに販売会社を設立までしました。結果安宅産業は日本衣料との取引においてわずか2年間で債権を169億円にまで膨らませます。(日本衣料の資本金は数億円)
ゴルフ場建設
動画でも軽く触れましたが、安宅産業はゴルフ場建設にものめり込みました。田中角栄氏の日本列島改造論により空前の土地ブームが起きました。今と違い地方の土地までが高騰します。その中安宅産業は不動産投資やレジャー産業としてゴルフ場、ボウリング場、サウナ風呂などにも進出しました。そして最も注力したのがゴルフ場建設です。
安宅産業は総合商社が11カ所のゴルフ場建設を同時並行的に行うという、とち狂った事を行います。これは営業本部がそれぞれ独自にゴルフ場建設を計画したことによるものだと思います。このゴルフ場建設は日本列島改造論ブームと取引先の依頼に安易に飛びついた結果です。ちなみにこのゴルフ場建設は当時の市川社長は殆ど実態をしらなかったようです。
ゴルフ場建設は安宅破綻後、一部なんとかゴルフ場にすることができたものもあるようです。その中の一つが大月カントリークラブとのことです。※参考図書は下記に貼っときます
大月カントリークラブ【公式ホームページ】│ 富士山と四季の花樹のコラボレーションが活きる名門コース
穀物取引
安宅産業は売上をなんとか伸ばす為に既存の取引に無理矢理介入する事例があります。その中の一つが海外の穀物取引です。
米国のガーナック社とその兄弟会社である英国のヨーロピアン・グレイン社との穀物取引に介入しました。元々両社で取引が成立しておりましたが、安宅産業がガーナック社から穀物を買い日本に輸入して、輸出してヨーロピアン・グレイン社に穀物を販売するという形にしました。もちろん伝票上の話しで、実際は日本に輸入はされておりません。
これで輸出入代行業務として手数料収入があればいいのですが、安宅産業は逆に手数料を支払って、この取引に介入します。これは今後の取引につなげることも考えられますが、実際は社内に設けられた輸出入奨励金を得られることが目的でした。
安宅産業はこのような事実上の架空取引と思われるものが多く存在しておりました。特に三国間貿易は非常に多く、銀行の管理下に入った1976年9月期の中間決算以降は大幅に三国間貿易の売上が下がりました。
売上増という結果だけを追い求めた結果、架空取引や無理な取引が蔓延して、安宅産業への破綻へと導かれました。
手数料払って売上伸ばすって意味分かんねーぞ
「売上を伸ばす」という結果だけを追い求めて
会社を破綻させるって・・・
ぶっちゃけこういう目標に対して
結果しか見てないやつ結構色んな会社にいるぞ!
まあ、そうだろうな・・・
目標設定誤ると痛い目を見る事例だと思います。