オロドウ日記

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なぜシャープは鴻海と組んだのか?

ここで宣伝。しくじり企業Lアップしました。


【ゆっくり解説】しくじり企業L 09話 ~遠藤商事Holdings~

シャープの補足ブログのラストとなります。今回はシャープと鴻海について解説します。

 前回↓

www.cakaricho.com

 

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画像はGetty Imagesより

 

鴻海精密工業

鴻海精密工業(鴻海)は台湾に本社を置く電子機器受託生産(EMS)を行う企業です。2017年の連結売上高は4.7兆台湾ドル(約17.7兆円)と、日本でこの売上に勝てるのはトヨタのみです。鴻海は1974年テリー・ゴウ(郭台銘)が24歳の時に起業。中国の安い労働力を武器にEMSで成長して、巨大な鴻海グループを形成しました。この鴻海は現在シャープの株式を65.93%保持しており、傘下に収めております。この鴻海はなぜシャープを傘下にすることができたのか。

鴻海とシャープの馴れ初め

シャープと鴻海が付き合い始めたのは2000年前後。当時のシャープはノートパソコンの生産をメーカーに外部委託しようと台湾メーカーを物色していて、その中の一つとして鴻海がいました。当時のテリーは「我々は単なる組立やで終わらない」と溢れんばかりの野心を出していたようです。

鴻海とシャープの提携

その約10年後の2010年に堺工場の稼働率が悪化して、液晶事業のてこ入れが急務でした。そこで当時の社長の片山は鴻海との連携に動き出しました。シャープは液晶の特許実施権の許諾契約を鴻海グループの液晶パネル大手である群創光電(イノラックス)と結びました。

その後シャープと鴻海の距離はどんどんと近づきます。しかし当時の会長の町田は鴻海を油断ならないとして、片山に変わって一歩引いて交渉します。そのため積極的な連携が図れませんでした。とは言うものの、この時のシャープは赤字を垂れ流し中で、血(資本)を欲しており、鴻海との提携は避けては通れない状況でした。シャープは2012年に最も出血が酷い堺工場への出資比率を下げて、代わりに鴻海グループが出資を行ってもらいました。さらに鴻海はシャープ本体に対して10%を出資するという案で合意しました。鴻海は堺工場への出資を実現し、堺工場に対して50%の出資をすることができました。しかしシャープ本体への出資はこのとき実現できませんでした。

実現しなかった理由として鴻海(テリー)はシャープの業績が悪化しているのを見て、より有利な条件を出そうとシャープに対して揺さぶりをかけ続けました。例えば、堺工場に対して他社(VIZIO)の出資も受け入れて欲しいだとか、鴻海の出資比率をもっと上げて欲しいなど・・・。シャープもなんとか躱そうとしますが、この煮えきれず、決断が遅いシャープにいらだったのかテリーは「丸ごと買うぞ」と思わぬ本音を漏らしたこともあったようです。

鴻海が接近する理由

鴻海はなぜ、ここまでシャープを欲したのか?鴻海は中国の安い労働力を武器にEMSで成長しました。しかし中国の労働力が高騰しており、この方程式に陰りが見え始めました。そのため鴻海は高付加価値生産へのシフトが求められます。そこで現れたのが高い技術力とブランド力を持つシャープでした。テリーはシャープと鴻海が組めば宿敵のサムスンを倒せると豪語しました。

私は鴻海とシャープの交渉の相性は互いに悪かったと思います。鴻海はトップダウンでテリーが全てを決定します。テリーは相手に決断を急がせて、ある程度まとまったところでも、翌日になったらより有利にならないかさらに詰める中国式の交渉です。逆にシャープはボトムアップで合議でものごとを決定。しかも当時は奥田・片山・町田がバラバラに動いているキングギドラ経営でトップが誰だかわからない状況の時でした。交渉がうまくいかないのも当然かと思います。

サムスンとの浮気?

シャープは鴻海以外にもクアルコム等からも出資交渉も行っておりました。その中でも注目すべきはサムスンでした。サムスンはシャープの複写機事業なども求めてシャープに近づきます。2013年シャープはサムスンから100億円ほどの出資を受け入れました。しかしこの出資に懸念を示したのはもちろん鴻海(テリー)です。鴻海はシャープと一緒にサムスンを倒すと考えていたのに、そのサムスンの出資を受け入れるというのは納得出来ませんでした。

その後、社長は高橋に代わり本格的な改革を行い、シャープはなんとか危機脱出か?ということで支援の話しは少し隠れました。しかし高橋は実情を把握しておらず、単体での再生が不可能になるほどの巨額赤字を計上することになります。

残された道

このときシャープに残された道は二つ、鴻海に助けられるか、産業革新機構に助けられるかの二択でした。

産業革新機構は全部で3000億円規模となり、事業部門ごとに他社と提携切り離して、液晶部門はジャパンディスプレイと、家電部門は東芝の家電部門と統合する大枠でした。経営陣は総退陣、社員の雇用も不透明で、銀行の出資に関しては2000億円の優先株を放棄させ、1500億円のDES追加(債権の株式化)という形でした。

対して鴻海は7000億円規模の出資となり、事業形態は原則現状維持、経営陣・社員も現状維持、銀行出資は2000億円の優先株を簿価で買い取ると約束をしました。

これらを見ると、圧倒的に鴻海の方がメリットが大きいです。逆にシャープは産業革新機構を選択した場合、銀行、株主から訴えられる可能性があり、負ける可能性が高かったようです。

では鴻海一択か?と言えばそうでもありません、産業革新機構の支援に決定すれば国内に技術を保持できます。逆に鴻海が支援することになれば技術が海外に流出する恐れがありました。しかしながら、既にシャープと堺工場を共同運営していのもあり、反論できる余地がありました。結局、産業革新機構ではなく鴻海の支援を受け入れ、鴻海の傘下となりました。

参考にした本↓

 

このときニュース見てたけど

なんで鴻海と?って疑問に思ってたなぁ

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産業革新機構は家電を東芝、液晶をJDIに統合案

ある意味怖いifストーリーだな

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            まあ手を差しのばしてくれるのは

            救う価値があるからだよな

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俺だったら救う価値がないと言いたいのかい?

 

 

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