ダイエーの動画を上げきったらブログを上げると思った君、残念だったな!しくじり企業Lを出したくてそっちに注力してました。すみません。
【ゆっくり解説】しくじり企業 Chapter16 ~ダイエー~後半
産業再生機構入りに対するそれぞれの立場
ダイエーはマイカル以上に巨大でした。マイカルは会社更生法という結末の形でしたが、当時の負債だけをみれば、ダイエーはマイカル以上だと思います。ではなぜ破綻ではなく産業再生機構となったのかなどをお話したいと思います。
ダイエーの場合は多くの人が感じているとおり、倒産できなかったのは巨大すぎるからです。ダイエーが破綻した場合、多くの納入企業を中心に連鎖倒産する恐れがあり、地元の雇用や流通を担っている重要な企業だけに、経済不安になる恐れがありました。それを回避するために当時の小泉首相もダイエーは破綻させてはならいなと、異例の声明をだしております。
破綻直前のそれぞれの立場をまとめますと
- 政府・・・立場上静観する構え。政府が一部の企業に肩入れするのは難しかった。再生機構の対応にもいらついていた。
- 経済産業省・・・ダイエーの産業再生機構入りを回避するためにいろいろな対応を実施。最後までダイエーの意見と一致していた。理由としては金融庁や銀行の、金融面の支店で再建計画をするのが納得できず、納入している中小企業などのことも地域経済を含めて考慮していた。
- 金融庁・・・前提の考えとして当時課題であった不良債権を減らしたい。その思惑からか、当時の竹中金融担当相は先送り型の再建計画をしないでほしい。要はとっとと産業再生機構入りをしろということだと思います。
- 主力銀行・・・早くダイエーには産業再生機構入りをしてほしい。実際は産業再生機構入りして、ダイエーの債権を不良債権扱いから外したかったのもある。なのでダイエーが独自再建案を持ってきた場合のカードは金融支援をしないというものだった。
- 産業再生機構・・・あまりどちらの味方というわけではないですが、資産査定をする上で、実は民間のスポンサー用の査定と産業再生機構用の査定を同時にやっていたため、ダイエーは両方の査定対応に苦慮して遅れていました。産業再生機構の逆算ではこのままだと期日(破綻回避の為の期限)に間に合わないから一本化を要請していました。ただ、立ち上げ当時で政府の肝いりの組織の為に失敗は許されない立場でした。
- ダイエー・・・産業再生機構入りを拒否しています。そのため民間のスポンサー候補を含めて査定を行ってもらい、最適な提示を見てから決めたかった。という言葉もありますが、経営者への責任追求を恐れていた面もあったようです。当時の産業再生機構の社長であった斉藤惇氏が書かれた日経の私の履歴書では、最も気にしていた部分だったと記載されております。
決めないダイエーに苛つく銀行
それぞれの思惑がありますが、大きな枠組みとして、金融庁・主力銀行VS経済産業省・ダイエーという構図になっておりました。
ダイエーの高木社長も主力銀行から、金融支援のカードをちらつかされて早く産業再生機構に入るよう促されますが、拒否しました、というより逃げました。主力行のトップと高木社長のトップ会談でも、高木社長は「ここでは決められない」と逃げております。
産業再生機構の期限ギリギリにの役員会の決議で産業再生機構入りの議題を持ちかけるものの「産業再生機構には協力するよ!」「民間スポンサーの査定もするよ!」「民間スポンサーの入札結果で決めようぜ」という決議で終わっています。つまり現状維持でした。これは労働組合も「民間支援でやろうぜ」という決議を全国で決議して、ダイエー経営陣と思惑が一致しておりました。これには銀行側も困惑です。
しかしながら、金融支援が絶対に必要という立場でもありました。というのも監査法人から金融支援がないのであれば、ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)の注記を付さないと言われていました。つまり「この会社やべぇ」という烙印を押されて、資金調達はさらに困難な状況に陥ります。そのため絶対に金融支援は取り付ける必要がありました。
この案件に関して最悪の結末はやはりなにもできず、間に合わず法的整理(会社更生法・民事再生法)になることです。こうなれば銀行側も損害額が莫大に跳ね上がり、経営陣も全取っ替えの可能性もあります。なのでこのシナリオは「○なばもろとも」という展開です。
最後の攻防
産業再生機構が提示してきた10月12日に、主力行は高木社長に対して最後の説得を5時間行いましたが、結局は納得せず「民間スポンサーの入札と一緒に考慮したい」という回答で保留にした。その後高木社長は雲隠れしたと言われて、誰も連絡が付いておりませんでした。
このとき何をしていたかというと、経済産業省の幹部と面会していました。ことの報告をするためですが、実際は後ろ盾の確認をするためだと思いますが。しかしこの動きが官邸にはバレており、政府は「過度の介入をするな」という通達をしました。これによりダイエーには後ろ盾がなくなり、結局産業再生機構入りをせざるを得ないという道しかありませんでした。そして10月13日に産業再生機構の一本化に決まり、ようやく再建に向けて動き始めました。
なーーんか誰もダイエーについて考えてないよね
しょせん取引・商売だからな
利害が一致しないと動かないだろ
お前の周りの人間関係と一緒だな
え・・・・
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